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Phenix 株式会社志風音(SHIFFON)が事業継承
2020-11-12 (木) 15:50
SHIFFON社HPより
不死鳥は死なず!
ファッション、アパレル業界からの参入により「Phenix」は生まれ変わるのか!?
2020年9月、スキーウェアブランド「Phenix」が12月をもって事業を終了すると報じられた。2000年以降、さまざまな形で経営体制が変わっていった「Phenix」であるが、長年にわたり、日本ナショナルチームやノルウェイナショナルチームへの供給など、日本のみならず、世界でもトップクラスのウェアブランドとして世界中のスキーヤーに愛されてきた。このニュースは、選手はもちろん、ユーザーそしてショップなど、たいへんショックなニュースとなった。このまま「Phenix」はなくなってしまうのか!?そんな不安がスキー業界を駆けめぐる中、10月にファッション、アパレル業の「株式会社志風音(SHIFFON)」が事業を継承するという発表がなされた。同業とはいえ、異分野からの参入となる「志風音(SHIFFON)」。その経緯と今後の展望を代表の西村健太氏に訊いた。
株式会社志風音 代表取締役/西村健太氏
ときに笑顔を見せながら今後のPhenixの展望を語る
SnowMAP-「Phenix」ブランド事業継承という発表に多くのユーザーが驚きと喜びを感じていると思います。とはいえ同じアパレル分野ですが、ファッション業界を主とするSHIFFON社。まずはそのいきさつを教えてください。
西村(SHIFFON)-Phenix社が日本で展開している「Kappa」ブランドを2018年からライセンス契約をしています。その流れから今回の事業継承の話へとつながりました。
SnowMAP-西村さんはスキーの経験はありますか?
西村(SHIFFON)-僕自身はスキーの経験はありません。ただ、偶然にもこどもが今、体操教室に通っていて、その一環としてスキーを習っています。僕自身は5年ほど前からスノーボードをはじめました。今は家族で冬に北海道のスキー場で楽しんでいます。
SnowMAP-同じアパレルとはいえ、ウィンタースポーツという異分野、そしてスキーの経験もないという点で不安やリスクはないですか?
西村(SHIFFON)-僕自身のスキー経験、また、これまで弊社でもスキーウェアの展開に経験はありません。ですが、むしろそれがプラスになると考えています。ファッション業界での経験がもちろんベースになりますが、いちユーザーとして俯瞰的にマーケットをみることができると思います。「Phenix」社からもスタッフを数名、弊社にて受け入れます。これまでの経験、そして我々の視点をうまく融合させていきたいと思います。
長年にわたりノルウェイナショナルチームのウェアサプライヤーであった「Phenix」
2021年も「Phenix」の供給は継続されるという
SnowMAP-そういった視点から現在のスキーマーケットをどう見ていますか?
西村(SHIFFON)-本当にユーザーが求めているもの。それに対してメーカーが発信しているものや、業界の慣習など、それらがミスマッチをおこしているのではないかなと思う点はあります。長く続いたブランドであるからこそ“やめられない”で続いていた部分があるのではないかと。それが本当にユーザーが求めているのか?ブランドのためになっているのか?そのあたりをユーザー目線に立って検証したいと思います。我々は新参であるぶん、その“やめられない”を思い切って“やめる”ことはできます。それだけ改良の余地、伸びしろは多いと思っています。
もちろん、すべてを否定するつもりは全くありません。これまで築いてきたユーザーからの信頼。なにより品質や“安心感”というものが「Phenix」というブランドの絶対的な価値だと思います。「Phenix」だからという理由で選んできていただいた歴史といってもいいでしょう。スキーヤーなら誰もが知っているブランド。これだけ実績のあるブランドだからこそ、さまざまな面において多様化させていくことも可能であると思います。
スキーマーケットについては、そこまで大きな市場拡大ということは望めないといったところが現実的な見方ではないでしょうか。これはファッション業界でも同じことは言えますが、ある一定の市場規模に対してのシェア取り合戦となるでしょう。また、ファッション業界はその奪い合いに何百というブランド、企業が参戦しています。スキーウェアについてはそこまでの競合数ではないところもあり、我々の経験値を活かし、セールスやマーケティングなど、さまざまな面においても自分たちが優位に立つチャンスは大いにあると考えています。
SnowMAP-2021年から「Phenix」はどのように生まれ変わっていきますか?
西村(SHIFFON)-事業継承の契約から時間もない中ですが、途切れることなく2021モデルをしっかりと展開します。それに向けた展示会などの準備も進めています。ただ、2021モデルについては、時間の問題もあり、これまでの「Phenix」のブランドを踏襲するものがメインとなります。ただし、2022年以降は完全にリニューアルされたものとなっていきます。
そして、これまで「Phenix」ではスキーウェアとは別にアウトドアラインを展開していましたが、我々はそこを「アーバンライン」とし、デザインから「SHIFFON」が手がけ、全く新しい展開を始めます。そこはデザインや販路も含め、我々が「Phenix」を手掛ける上での強みのひとつだと思います。もちろん「Phenix」はスキーウェアブランドです。そこはブランドの本質を崩すことなくやっていきます。
また、これまで「Phenix」ウェアを愛用してこられた方々にとっては品質や安心といったところがなくなってしまうのではないかと思っていられるかもしれませんが、新潟のテクニカルセンターも弊社で継承していきます。そのクオリティが保てないということはありません。むしろ、残すべきもの、新しくするものの選択を間違えなければ、ブランドとしてはまだまだ成長することが可能性は大いにあります。これから新しく生まれ変わっていく「Phenix」に期待してください。
(2020年11/4(水)インタビュー収録内容より)
昨シーズンは雪不足にくわえ、年明け以降はコロナウィルスの影響からさまざまな大会やイベントも中止となり、例年以上に厳しいシーズンであった。もちろんウィンタースポーツに限らず、あらゆる業界で事業縮小をせざるを得ない状況のなか、新規参入というかたちで歴史ある「Phenix」が継承されるというのは明るい話題と言ってもいいだろう。「Phenix」がこれからどのように変わっていくのか。そして、アパレル、ファッション業界からの新たな風がウィンタースポーツ界を刺激し、さらに活性化していくことに期待したい。
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