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2021 FISアルペンスキー世界選手権 水谷美穂インタビュー
2021-02-24 (水) 16:59
世界選手権初出場の18歳
技術、メンタル、言葉、多くの経験を積み今後の活躍に期待!
2019年のアルペン全日本選手権では高校生ながらGSで3位と好成績をおさめ、今シーズンはナショナルチームメンバーとしてヨーロッパで活動する水谷美穂(角館高校)。ワールドカップへの出場経験もないまま、世界のトップが揃う世界選手権に初出場。GSではDNFと結果は残せなかったものの、初めての世界トップクラスでの戦い。そして、初めてシーズンを通してヨーロッパで過ごすなかで見えた課題と、つかんだ手ごたえ。世界選手権レース後にその様子を訊いてみた。
SnowMAP-今回、初めての世界選手権出場となりました。雰囲気など含めてどんな感じでしたか?
水谷美穂-世界大会というものが初めての経験だったので、緊張などもあったのですが、まずは楽しめたかなとは思います。
SnowMAP-GSでのレース、国際映像ではコースアウトした後しか映らなかったのですが、どんな状況だったのでしょうか?
水谷美穂-ふたつ目の中間タイムの直前で転んでしまいました。緩斜面から斜面変化があるところですね。けっこう滑っていたのですが、全然映ってなかったって、いろんな人に言われてしまいました…。
SnowMAP-チームパラレルはどうでしたか?
水谷美穂-個人競技とは違い、自分のことだけではないという点と、なにが起こるか分からないというふたつのプレッシャーからか緊張しましたね。それでも途中までけっこう動けて、悪い滑りではなかったのですが、最後の急斜面で内足がトップに引っかけてしまいました。
SnowMAP-滑っているときは横の選手は見えているのですか?
水谷美穂-見えています。ちょっと遅れているなと思って、もう行くしかないと思っていたら最後にミスしてしまいました。
SnowMAP-今シーズン、ナショナルチームメンバーとしてヨーロッパで活動することになり、トレーニングや生活など、どのように過ごしていますか?
水谷美穂-8月から遠征が始まったのですが、最初の頃にくらべてメンタルも言葉も、もちろんスキーの技術も格段に強くなれたとは思っています。やはり最初は言葉の面で困りましたね。スキースタイルや練習方法なども違ってくるので、日本でやってるのは大きく違いましたね。ヨーロッパで初めて会ったコーチとのコミュニケーションの取り方などでは困りました。トレーニングの後に、あの言葉が言えなかった。伝えられなかった。というところから英語も勉強し、少しずつですが、自分の気持ちを言葉にできるようになってきました。今はだいぶコミュニケーションをとれるようになりました。
SnowMAP-そのような状況のなか、日本にいる誰かに助けを求めるようなことはなかったのですか?
水谷美穂-それほど誰かに助けて!というのはなかったのですが、やはり母には助けを求めることは多かったです。どうしよう!とかコレできない!とか母に聞いてもらえるだけで安心します。やはり母は心の支えになっていました。
SnowMAP-今シーズンは安藤麻選手と一緒に活動することが多いと思いますが、世界のトップレベルで戦く選手とトレーニングや生活でも一緒に過ごすなかで学ぶことも多いですか?
水谷美穂-安藤選手は雪上はもちろん、陸上でのトレーニングでも、ひとつひとつ動きがとても丁寧で、しっかりとその課題をクリアしているという印象です。プレッシャーも多いと思いますが、まっすぐにスキーに向き合っているなと思っています。そういったところを見ているだけで勉強になります。
SnowMAP-その安藤選手と同じ時間を共有できているというのはご自身にとってもプラスですね?
水谷美穂-そうですね。とても貴重な時間を過ごしています。今シーズンは女子も2人という小さいチーム状況、加えてコロナということなどをプラスに捉えれば、長い間ヨーロッパで過ごすことができているという点で、いいシーズンをおくれていると思います。
SnowMAP-そのようなシーズンを過ごしてきたなかで、ポイントの獲得や結果も求められると思います。その上で課題などはありますか?
水谷美穂-海外の同年代の選手や、ワールドカップでもトップ30に入るような選手とくらべても練習ではタイムはそんなに変わらないです。ですが、やっぱりレースとなると違うものがあって、そういったところから見ると、メンタル面が足りないかなと思います。2本そろえていい滑りをすることが難しく、気持ちの切り替えだったりとかが、自分のなかでまだ分からない部分はあります。そういったところを無くしていかないと、世界では戦えないと思っています。
これまで日本のレースでは抑えても勝てるレースがありました。ヨーロッパではやはり、イチかバチかというか、行くしかない!という感じでいかないと勝てないですね。やはり自分の100%を出せないと戦えないですね。それを2本しっかりとそろえるというのが今の自分の課題ですね。SLで優勝したカタリーナ・リンスベルガー(AUT)選手も練習ではそんなに速いと思ったことはないんですよね。でもレースとなると別人のように滑っているので驚きます。やっぱり、何かあるんですね。
SnowMAP-まだ18歳とはいえ、ヨーロッパでは同年代の選手が多く活躍していますね?
水谷美穂-中学生の頃から海外でのレースは経験してきました。知り合いもいて、世界選手権にも出場していました。レース会場で話すこともありますが、彼女たちがミスを恐れず、100%を出していこうとする姿勢には刺激になります。
SnowMAP-ナショナルチームとして活動し、世界選手権にも出場。経験値を積んできていると思いますが、これからの目標とシーズン終盤のスケジュールはどうですか?
水谷美穂-まだワールドカップどころか、ヨーロッパカップにも出場できていません。FISレースにしか出場できていない状況で世界選手権に出場させてもらったので、今回はいい経験になりました。本当は2本目まで滑りたかったところはありますが…。
この後は世界ジュニアの大会があるので、まずはそこに標準を合わせてトレーニングをしていきます。セルビアでのヨーロッパカップに出場する予定だったのですが、キャンセルになってしまったので、スロベニアでのFISレースに出場する予定です。そのまま世界ジュニアの大会があるブルガリアへ渡り、ロシアでのファーイーストカップにも出場する予定です。それが終わったら日本へ帰国する予定です。
SnowMAP-シーズンも終盤ですが、まだ世界ジュニアやファーイーストカップなで大事な大会が続きますね。期待しています。
水谷美穂-はい。ファーイーストカップではしっかりとポイントも獲得し、来シーズンもナショナルチームに入って、もっと活躍する姿を見せたいと思います!また、来年の北京オリンピック。そして2026年のオリンピックは今回、世界選手権と同じコルチナです。さらに成長した姿で戻ってきたいと思います。
写真提供:水谷美穂/日本アルペンナショナルチーム
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