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2021 FISアルペンスキー世界選手権 安藤麻インタビュー
2021-02-26 (金) 17:56
快挙!日本過去最高のSL10位入賞!
ワールドカップ最終戦出場へと期待は膨らむばかり
今シーズン、ワールドカップでも15位にはいるなど、自身のベストリザルトも更新し、好調さを見せる安藤麻(日清医療食品)。その好調さのまま3度目となる世界選手権に出場。SLでは日本過去最高順位10位とまたひとつ世界のトップに近づいた。現在、ワールドカップSLランキングは29位と最終戦出場も射程圏内にとらえる彼女の“緊張に耐えた”というSLのレースを振り返ってもらった。
SnowMAP-SL10位入賞おめでとうございます。
安藤麻-ありがとうございます。がんばったというか、緊張に耐えた!という感じです。
SnowMAP-ゴール後は喜びを爆発させた感じですね。
安藤麻-実はあの時の記憶はないんですよね。後で映像を見て、こんな風に喜んでたんだぁ。と思ったくらいです。だから、本当に2本目はなんにも覚えてないんですよ。ゴールした後、スキーを外したくらいからは覚えています。
SnowMAP-SLでのレースは、得意な斜面だったのではないですか?
安藤麻-レースバーンの隣のコースがアップバーンだったのですが、そこから見て、スタートからけっこう急斜面だなとは思っていました。スタートが緩斜面で漕がなくていけない状況とは違うので、よかったぁと思っていました。
SnowMAP-そういった面では安心してスタートを迎えられたのではないですか?
安藤麻-そうですね。それと当初は29番スタートだったのですが、ケガなどで他の選手の欠場もあり24番スタートになりました。少しでも若い数字でのゼッケンはうれしいものですね。
SnowMAP-まず1本目を滑り終えてどのような印象でしたか?
安藤麻-スタート順からみても10番台に入っていたいなとは思っていました。自分がゴールした時点では7位だったのですが、その状況を理解するのに少し間がありました。後で映像を見て、その間と順位を理解した瞬間に喜んだ感じに笑ってしまいました。フラッハウでのワールドカップの時に1本目に19位だったのですが、あの時も喜んで2本目に順位を落としてしまったので反省したんですよ。けどまたやっちゃいましたね(笑)。まだ1本目なのにと思ってはいたんですけどね。まさかのヒト桁でしたね。
SnowMAP-滑っているときはイメージ通りに滑れていたということでしょうか?
安藤麻-いや~、そうでもなかったです。途中、順手になってしまうことが何ターンかあったりと、自分のなかでは不安定な感じもありました。後ろに乗ってしまっている感じもあり、ちょっと怖かったですね。その状態でゴールしてあの順位だったので、びっくりですね。
でも逆によかったのかもしれないですね。悪い時は早くスキーを振っちゃってという感じで、角も出ずに後半も抜けていかないという感じなんですけど、いい時は、ちゃんとスキーに乗れていて、ずっと雪面にかんでるような感覚ですよね。ポールを通過して横に向いているときもテールまでしっかりとかんでいるというイメージですね。
それでも、やっぱり予想外でしたね。1本目が終わった後は、フラッハウの時も緊張していたのに、本当にどうしよう!って感じでした。タイム差もつまっていたので、ちょっとでも悪かったら一気に順位を落としてしまうなと。家族もテレビで見ていて緊張していたそうです。母はテレビを見れず、兄は吐き気がしたと。私は目まいをおこしていました(笑)。父はこれまであまりそういった感じを見せなかったのですが、初めて緊張したと言っていました。家族みんなで大変でしたね(笑)。
SnowMAP-2本目はご自身のスタート前にコース整備がありました。その間に冷静になれたりとかはしなかったのですか?
安藤麻-2本目の出走順から自分の前にコース整備が入ることは分かっていたのですが、1分伸びて、ホントにやめて!って思っていました。今すぐにでも緊張から解放されたいのに、途中でワンモアミニッツって!早くスタートさせて~!って感じでした。
SnowMAP-その後はゴールまで覚えていないということですが、素晴らしい結果でしたね?
安藤麻-本当によかったです。そして滑っているときの記憶は自分が緊張しているということだけですね。
SnowMAP-2本目の途中、緩斜面から急斜面にはいるところで若干、スピードがゆるんだように見えました?その後、冷静に滑っていたようですが?
安藤麻-いやー本当に覚えてないんですよ(笑)。でも、おそらくそこは無意識のうちにあえて抑えたと思います。GSはよかったんですけど、やみくものアタックでした。途中までは過去イチの滑りでした。ATOMICのスタッフも驚いていました(笑)。ただ、やみくに攻めるのは余裕がないということになるので、ミスしてしまうなと。それもあって、SLでは抑えるところは抑えようとは思っていました。1本目も最初の5ターンは抑えめでいきました。そこを抜けたら攻めようと。抑えるところ、攻めるところをGSでの滑りから活かすことができました。スタートから急斜面だったので、そのあたりで気持ちに余裕があったせいもあります。
SnowMAP-抑えたなかでもあの順位ですから、ワールドカップでの調子も含めてひとつ上の段階に上がっているのではないですか?
安藤麻-そうだといいですねぇ(笑)。それと、最初の5ターンで焦ってしまったら全部が焦ってしまうと思いました。グダグダの状態でのゴールになってしまうんじゃないかと。ここからは大丈夫と思えるところから攻めていこうと思いました。そのあたりはいい判断ができたと思います。
SnowMAP-やはり冷静な分析と、それをしっかりと体現するというのはトップレベルに近づいているということではないですか?
安藤麻-フラッハウでの経験も大きいと思います。今回も2本目で20番台に順位を落としたらどうしようとか思っていました。1本目が終わってからも、そんな感じでソワソワしてました。実はレース前日、兄に子どもが生まれまして、レースに行く前に赤ちゃんの映像を送ってくれました。1本目はそれ見て、ちょっとリラックスして滑れました。2本目をスタートするまでは、もはや落ち着き方が分からなく、兄に連絡してまた、赤ちゃんの映像を送ってもらい、自分の滑りも見ずに、ずっと赤ちゃんの映像を見てました(笑)。兄に子どもが生まれ、私も結果が出たので家族みんなハッピーになりました。今、私も含め家族は、いろんなことから解放されてホッとしてますね。
SnowMAP-今回の世界選手権ではタイトな日程のなか4つのレースが続きましたね。
安藤麻-パラレルの2レースは全然ダメだったので、レースの後はGSとSLの練習をしていました。パラレルやGSをスキップするか、正直、悩みましたね。やはりスケジュールがタイトで、いちばんがんばりたいSLが最終種目のため、グダグダになってSLに入りたくなかったんです。ですが、GSは調子が悪くなかったので、もう1回がんばってみようかなと。結果としてはDNFですけど、滑った感覚としてはSLにもつながるいいレースだったと思います。そういった意味ではワールドカップからいろいろな流れがうまくマッチしたのかなと思っています。
SnowMAP-やはり着実にステップアップしていますね?
安藤麻-次のレースでまたリキんでしまいそうでこわいです(笑)。それでも、ワールドカップポイントというところはしっかりと考えてやっていきたいです。ワールドカップの最終戦に出場したいのでがんばらないとですね。でもがんばり過ぎちゃうとダメだからがんばらないで、がんばります!
写真提供:ATOMIC/安藤麻/日本アルペンナショナルチーム
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